「野性の経営」 データ時代に見失いがちな「本質」を取り戻す力
2025/08/18
現代の経営では、売上やKPIといった数字やデータが意思決定の中心になります。しかし、野中郁次郎先生が提唱する「野性の経営」は、数字やデータだけに依存せず、人間本来の感覚や直観、経験を重視する経営の姿勢です。これは、データ分析や数値目標に偏りがちな経営手法に対して警鐘を鳴らすもので、単なる感情論ではなく、SECIモデル(知識創造理論)を基盤とした理論的な提言でもあります。
データ偏重が招く「三大過剰」に注意
野中先生は、日本経済が長期停滞した背景に、「オーバーアナリシス(過剰分析)」「オーバープランニング(過剰計画)」「オーバーコンプライアンス(過剰規制)」という三大過剰があると指摘します。これは、Plan(計画)とCheck(検証)に偏りすぎ、Do(実行)とAction(行動)が疎かになる「分析マヒ症候群」の象徴です。いわば、データを追いすぎた結果、経営の「野性」や直感が劣化している状況を示します。
野性の経営とSECIモデルの融合
野中先生は、人間には数値化できない「暗黙知」が備わっていることを強調し、これを形式知へと変換し、新たな知を生み出すプロセスとしてのSECIモデルを提唱しました 。
「野性の経営」は、このSECIモデルの応用として位置づけられています。とりわけ、「現場感覚」「直観」「共感」といった身体的知恵=野性を経営に生かすことが、その要です。
フロネティック・リーダーシップとは?
野中先生は、こうした「野性」に基づく経営を導くリーダー像として「フロネティック・リーダーシップ」を提示しました。
特徴は以下の6つです
善い目的を掲げる
現実を直観する
対話する場をつくる
直感の本質を物語る
政治力も行使して物語を実現する
実践知を自律分散させ組織化する
ソニーの平井一夫元社長によるタウンホールミーティング(経営者との対話集会)や、「感動(KANDO)」の目標設定も、このリーダーシップの実践例とされています。
ドイトゥン開発プロジェクトの実践事例
「野性の経営」の書籍の後半では、タイの「ゴールデン・トライアングル(麻薬地帯)」が、非営利財団による再生によって観光地へと変貌を遂げた事例が描かれます。鍵となったのは、地元住民と共創し、「暗黙知」を活かした共感のプロセスでした。
「一人称の思い(情熱)」を、「二人称の共感(共鳴)」へ、「三人称の組織知」へと昇華させるこのプロジェクトは、「野性の経営」の理論を現実に落とし込んだ秀逸な事例といえます。
データと野性の両立こそ現代に必要な判断力
データ分析は経営に不可欠ですが、それだけでは判断が偏りがちです。「野性の経営」は、数字やデータの背後にある背景・感覚・価値観を取り戻す重要性を提唱しています。数字やデータだけに縛られず、人間の身体や直観、物語性をもとに判断することで、VUCA時代に柔軟で持続的な組織をつくることが可能になります。
参考動画および記事
【追悼】野中郁次郎教授、「リーダーよ、人間本来の力「野性」に目覚めよ」magazine | Forbes JAPAN編集部
【いのち会議】~いのち宣言をつなぐ「100のアクション」~ 第1弾「知識創造理論、SECIモデルの実践」
野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)講演:「今こそリーダーはイノベーターシップを発揮し、知的バーバリアンたれ」 多摩大学大学院MBA YouTubeチャンネル
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